「伝える」ということ 〜 情報まとめサイトを支える技術

ごぶさたしております。

もともとなにか登壇する機会があったときに……とぼんやりまとめかけていたネタを アイドルマスター Advent Calendar 2019ということで出してゆきたいと思います。

と軽いノリで書き始めたら、9000文字くらいのおもわぬ長文に……。 アドベントカレンダーの締め切りをぶっちぎり過ぎました。

TL;DR

事実を正確にわかりやすく伝えるためには次のようなことが大事!

  • 情報収集は「一次ソース」を意識する
  • 集めた事実は、予想や妄想を混ぜず、あいまいではない言葉で正確に伝える
  • 「何が大事か?」を意識して、コンテキストにあった情報を投稿する
  • 「バズる」ことを目的にしない
  • 継続は力なり

「伝える」こと = 情報処理

突然ですがみなさん、いわゆる「まとめサイト」という概念はご存知でしょうか?

世の中にあふれる情報をいい感じにまとめて配信してくれる便利なウェブサイト。 そんな「まとめサイト」がやっていることは、シンプルに表現するとこうです。

情報を「集める」→「まとめる」→「発信する」

これってみなさんおなじみの「入力された情報に、なんらかの処理を加えて、出力する」 つまり「情報処理」のことではないでしょうか?

「情報処理」といえばプログラムや機械学習のことを思い浮かべるひとが多いと思いますが、それだけではないのです。

そんな「伝えること」に10年以上最前線で向き合ってきた筆者が、その活動についてお話しします。

アイドルマスターの情報まとめサイト

紹介が遅れました。 わたくし「THE IDOLM@STER データベース」という情報まとめサイトを運営している者です。

imas-db.jp

開設から10年以上が経過し、サイトのほうは手が回らない部分が多くなっているのですが……。 近年ではTwitterでの情報発信に力を入れていて、積極的に活動しています。

twitter.com

おかげさまで、6万人以上の「プロデューサー」のみなさまにフォローをいただいております。

(注記: 運営者の表記は自身のみが参加する非営利サークル「まるあみゅ.ねっと」となっています)

アイドルマスター」とは?

「プロデューサー」ではないみなさんのために、軽く「アイドルマスター」という作品についてご説明をさせていただきます。

THE IDOLM@STER」(アイドルマスター, 略称は"アイマス") とは、バンダイナムコエンターテインメントが製作している、アイドルをテーマにしたコンテンツです。

idolmaster.jp

2005年7月にリリースされたアーケード版から始まったこの作品、「シンデレラガールズ」や「ミリオンライブ!」などのファミリーが増え、 全て合わせると、アイドルの人数は300人以上、楽曲は1000曲近くになる大きな作品となりました。

アイマスに集う人々は「プロデューサー(P)」となり、それぞれの担当アイドルを輝かせるため、日々プロデュース業にいそしんでいます。

情報まとめを行っている理由(ワケ)

THE IDOLM@STER データベース」は、楽曲の情報を収録CDや作詞・作曲などさまざまな角度から調べることができるサイトとして始まりました。

その後、サイトの更新情報を通知する目的でTwitterアカウントを開設。 サイトでは扱っていない「最新のニュース」のような情報を試験的に扱いはじめたところ、好評をいただいて、今にいたります。

Twitterでの情報発信は、次の3つがミッションとして挙げられます。

  • 公式とのタイムラグを埋めるため、いち早く共有する
  • 変な情報が出回るのを防ぐため、事実をソース付きで正確に伝える
  • 取捨選択とフォローアップ

公式とのタイムラグを埋めるため、いち早く共有する

アイドルマスターの関連情報は、ライブイベントやインターネット配信番組にて発表されることが大半です。

イベントや番組の終了後に公式ブログへ情報がアップされるのですが、それまでには数十分のタイムラグが存在します。

idolmaster.jp

そんな公式発表までのタイムラグを埋めるべく、イベント終演直後の速報や、生配信での実況投稿などを行っています。

変な情報が出回るのを防ぐため、事実をソース付きで正確に伝える

作品が大きくなり話題になることが増えると、事実とは違う、予想や妄想、さらには悪意のある捏造などが入り混じり、カオスな状態になることもめずらしくありません。

ですので、「事実は何であるか?」と「どのように検証可能か?」が大事になります。

一次ソースをおさえ、曲げずに出していくことが重要です。

取捨選択とフォローアップ

アイマスの各アプリゲームの大半が、更新時間を15:00に設定しています。

つまり、同じ時間に大量の情報が出回ることがたびたび発生します。 「事務員4人がPを引っ張り合う」という比喩表現があるくらいです。

ゲーム以外にも、グッズやイベントなどたくさんの情報が日々あふれています。

そんなたくさんある情報を取捨選択したり、締め切りなど期限が近づいているものをリマインドするなど、まさに「まとめサイト」としての力量が問われるところです。

情報まとめサイトを支える技術

では実際にどのようなことをやっているのか、順を追って見てゆきましょう。

情報を集める

まずはなんといっても、投稿するための情報を集めるところから。

すばやく正確な情報を集めるため、できる限り一次ソースへアプローチするのが基本です。

  • 新出情報があると予想されるイベントには参加する
  • メモを速記する、大事なことをおさえる
  • 生配信をリアルタイム視聴する
  • 演者さんたちからの情報発信
  • その他にソースとなりうるものを確認しておく

新出情報があると予想されるイベントには参加する

前述の通り、アイドルマスターの関連情報は、ライブイベントやインターネット配信番組にて発表されることが大半です。

そのほかにも、各所でのコラボイベントやオンリーショップ、ホビー系展示会での新作グッズ初お披露目など、広くチェックするようにしています。

情報は足で稼ぐもの。

メモを速記する、大事なことをおさえる

ライブイベントでは録音・録画ができませんし、スマートフォンなどの電子機器も使用できないルールとなっています。 ですので、セットリストや発表事項を速やかに共有できるよう、公演中は紙のメモが手放せません。

次のスライドは別の機会で登壇した際の資料で、セットリストのメモについてふれています。

www.slideshare.net

また、イベントでの告知コーナーは5分程度のVTRに情報がたくさん詰め込まれています。 なるべく見て書く量を減らせるよう、大事なものからおさえることが重要です。

「日時や場所」はもちろん、「どのアイドルか」がとくに大事です。

なぜならば、プロデューサーのみなさんは「自分の担当アイドルを活躍させてあげたい!」と期待しているからです。

生配信をリアルタイム視聴する

ライブイベントより頻度が高いのが、インターネットの配信番組です。 平日毎日ある公式のラジオ番組はもちろん、月1ペースで各作品の生放送特番があり、情報発表の場として恒例になっています。

imas-db.jp

演者さんたちからの情報発信

Twitterアカウントで、各種公式アカウントや演者さんのアカウントをフォローしていて、ライムラインは逐一チェックしています。

ライブイベントや番組の直後は、演者さんからの写真や感想などが投稿されるので、見逃せません。

その他にソースとなりうるものを確認しておく

正確な情報には"ソース"が重要です。 「一次ソースはどこを見れば確認できるのか?」を把握しておく必要があります。

たとえば、新作グッズの情報は各メーカーの公式サイトや公式ソーシャルメディアアカウントなどがそれにあたります。

情報をまとめる、投稿する

集めた情報は新鮮なうちにお届け。

素早く投稿するために

ライブイベントでは終演直後に、生配信などでは放送中で情報が出た直後に、概要を作文して投稿する必要があります。

投稿までに残された時間はわずか。もう時間がないんです!

速報する内容を精査する

告知事項の速記をながめながら、どの情報から投稿するか整理します。判断基準は次のような感じです。

  • 初出情報かどうか
  • コンテンツにとって重要な要素かどうか
  • グループ化して1つの投稿としてまとめられそうか

整理した結果、投稿を少し後回しにしたり、そもそも投稿しないという判断になることもあります。

「大事なことをおさえる」で触れたように、「どのアイドルか?」ということが最も重要なのですが、ここに「コンテンツにとって重要な」というものがかかってきます。

例えば、作品群のひとつ「シンデレラガールズ」では「約200人のアイドルが登場する」という特徴があり、次のような事情があります。

  • CV(キャラクターボイス)が存在しない状態でサービスが開始
    • CVは後付けであり、CVが当たっていないアイドルのほうが人数が多い
  • アイドルの人数が多いため、出番が巡ってくるまでそこそこ長い間隔がある

つまり「シンデレラガールズにとって重要」かどうかを判断する尺度として、「どのアイドルか?」が他の作品群よりも重要となり、さらに「新規にCVが付く」が最も重要ということになります。

予想されることは準備しておく

事前にわかっている内容は、下書きとして開演前・放送前に準備しておきます。実際の例としては次のようなものがあります。

  • 【イベント名】、終演しました。アンコールを含めて全部で**曲。セットリストはこちら→【URL】
  • #デレステ 近日更新のガシャで登場するSSレアアイドルのシルエットが公開に。
  • ミリオンラジオ!にて #ミリシタ の次回イベント楽曲「***」のMVが公開に。(キービジュアルや報酬カードについては発表がありませんでした。)

これらは慣例から「そういうことがありそう」と容易に予想できるものです。

あいまいな表現を使わない

正確に伝えるため、ひとによって受け取り方が異なるような言葉をなるべく使わないように気をつけています。

「今日」「明日」はいつ?

なにげなく「今日から〇〇の××が始まりました」と書いてしまいがちになりますが、その投稿を「今日」見るとは限りません。 「2020/01/01 15:00」など具体的な表記に。

新宿駅」はどこ?

新宿駅で広告が掲出されています」さて、どの路線の新宿駅でしょう?

こういうときはもっと具体的に「JR新宿駅改札内」などの表現にします。 こうすることで、「移動中に立ち寄れそうだな」といったことを手助けできる情報となりますね。

twitter.com

エビデンス」をつける

「どのように検証可能か?」を解決するため、「エビデンス」つまり「その投稿が本当である証拠」をなるべく付けるようにしています。

公式のWebサイトがあれば必ずURLを記載。

なにかの現場を訪れたときは、その写真を。

生配信の速報であればスクリーンショットが有効です。 スクリーンショットはあくまでも「エビデンス」なので、意図的に画質を落とし、動画ではなく静止画としています。

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反応を確認する

投稿したあとは、内容に誤りがないかどうか、通知欄やエゴサーチに目を通しています。

反応の大きさから、プロデューサーさんたちがどのようなことに興味を持っているかも見えてくるので、なるべく確認するようにしています。

実践編

では、実際の例を見てみましょう。

「何を大事にしているか」や「どういう準備をしているか」に注目してみてください。

例1: イベントで発表された告知を速報するツイート

次のツイートは、シンデレラガールズ7thライブツアー名古屋公演2日目の告知事項を速報したものの一部です。

実際の告知内容はこの順番ではなく、また他の内容もあったのですが、重要だと判断したものから投稿しています。

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速報ツイートはこのあとも続きますがとりあえずこの3件について。

告知の中で「アイドルに新規CV追加」という要素から、新作アニメーション「Spin-off!」の予告を最初に持ってきました。 公開されたPVには他のアイドルも映っていましたが、正確でない状態を避けつつ「ボイスが初めて付いた」という要素を際立たせるため「的場梨沙」のみの記載になっています。 配信日時とCDの発売日はバッチリ速記してありました。

続けてソロCDのリリース情報。「アイドルにとって初めてのソロ曲がリリースされる」ことも、2019年現在では年に1-2回くらいしか無い貴重な機会です。

続けてアプリゲームの更新情報をまとめて。スライド5枚くらいを1つのツイートに収めています。

例2: イベント内容をレポートするツイート

次のツイートは、ラジオ番組「THE IDOLM@STER MUSIC ON THE RADIO」の公開録音イベントに参加したレポートです。

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ここではまず、公開されないであろう「会場限定のスペシャルステージ」の内容について、「誰が何をしたか?」を簡潔に要約しています。

続けて、公開されるであろう情報は隠すことを表明し、会場限定の内容をもう少しだけ補足しています。 この補足も、書きすぎにならないようキャッチーな要素のみにとどめています。

あくまでも「速報としての事実を届ける」ことに注力し、詳細なレポートは他のプロデューサーに任せるスタイルですね。

例3: 生配信の告知内容を速報するツイート

次のツイートは、生配信で「ミリオンライブ!シアターデイズ」ゲーム内イベントの予告があったことを速報したものです。

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ここでは、慣例から生配信でイベントの予告があるとわかっていたので、速報テキストのテンプレートを140文字以内で用意してありました。

#ミリシタ 次回***イベントは、***のユニット「***」による「***」。ランキングSR***、ポイントSR***。

伝えるべき大事な情報として「どのアイドルか」をバッチリ押さえていて、生配信のスクショというエビデンスをつけています。

メディアとしての信頼を得る

  • 信頼に応え続けるために
  • 予想や妄想などは事実と区別する
  • 「バズる」ことを目的にしない

信頼に応え続けるために

ライブイベントでの告知事項は、録音撮影不可能という性質上「エビデンス」を付けることができません。 ですので、いかに「言っていることは本当そうだぞ」と思ってもらえるかがカギとなります。

しかしこれは、後ろ盾のない個人にとって一朝一夕で得られるものではありません。

普段から「間違いのない情報を投稿する」ことをずっと積み重ねてゆき、 「あのひとが言っているならきっと本当なのだろう」と思ってもらえるよう、日々努力しています。

予想や妄想などは事実と区別する

2019年5月ごろに「DMM VR THEATERに月単位で予約が入っている!これはきっと765PRO MR STAGE第3弾だな!!」ということが、プロデューサーの間で話題となりました。

このとき「DMM VR THEATERに月単位で予約が入っている」のは事実でした。 (ソース: DMM VR THEATER 予約空き状況)

しかし「これは765PRO MR STAGEの第3弾だ」というのは、その時点では事実かどうかまだわかりません。

予想や妄想は、事実とは異なるのです。

ちなみにこのときの「月単位の予約」は、2020年2月に開催予定のアンコール公演のことではなく、無関係の別コンテンツのイベントが開催された期間のことでした。

「バズる」ことを目的にしない

前項の例のように、「バズる」ことを意図したツイートが多く見られるようになりました。

そうでなくても、プロデューサーは盛り上げようとして、おもしろおかしく書きたてがちです。

それはそれで大事なことですが、しかし「事実を正確に伝える」ことについては、「おもしろおかしくバズること」は全く不要です。

とはいっても……ネガティブな空気には逆らいたい

とはいいつつ、「おもしろおかしい」がネガティブな空気になったときはフォローするのもプロデューサーの努め。

次に挙げる例は、どちらも事実を提示しつつフォローを入れる内容となっています。

例1: ミリオンライブ!6thライブツアーのコールの件

ライブイベントで年代が古めの楽曲が披露され、歴戦のプロデューサーによる「コールしてるの俺だけ」というおもしろツイートがバズったときのツイート。

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例2: シンデレラガールズ7thライブツアー千葉公演会場の件

会場が「幕張メッセ国際展示場7-11ホール」と発表された際に、過去に同会場で開催されたライブイベントでのとあるキャストの発言を取り上げたツイートがバズったときのツイート。

twitter.com twitter.com

たゆまぬ努力の上に成り立っている

ここまで見てきたように、なにげない投稿ひとつにも、たくさんの手がかかっています。

これらは、もうすぐ15年になるプロデュース活動での知識や経験に裏打ちされたものであることはもちろん。 情報を発信することに長く向き合ってきた過程で身につけたものです。

継続は力なり。

みなさんもチャレンジしてみてください。

終わりだよ〜 (o・∇・o)

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